2026年9月03日

血圧を測ったときに、
「上が150で下が70だけど、差が大きすぎない?」
「上と下の血圧の差が60以上ある」
「血圧の差が大きいのは動脈硬化と関係ある?」
「上の血圧は高いのに、下の血圧が低いのは大丈夫?」
と気になったことはありませんか?
一般的に血圧というと「上の血圧が何mmHgか」「下の血圧が何mmHgか」を気にすることが多いですが、上の血圧と下の血圧の差を見る考え方もあります。
この差を「脈圧(みゃくあつ)」といいます。
脈圧が大きくなる背景には、加齢や高血圧、血管の硬さなどが関係することがあります。ただし、「差が60以上だから動脈硬化」「差が大きいから危険」と数字だけで病気を判断することはできません。
この記事では、脈圧とは何か、血圧の上下差が50・60・70・80mmHgある場合の考え方、動脈硬化との関係や受診の目安について解説します。
この記事のポイント
・上の血圧と下の血圧の差を「脈圧」といいます
・「上の血圧-下の血圧」で簡単に計算できます
・加齢などによって血管が硬くなると、脈圧が大きくなることがあります
・脈圧60mmHgを超えることがありますが、60以上だけで病気と診断されるわけではありません
・脈圧だけでなく、上の血圧・下の血圧そのものを確認することが重要です
・血圧が高い状態や上下差が大きい状態が続く場合は、内科・循環器内科へ相談しましょう
血圧の「上」と「下」は何を表している?
血圧を測ると、
130/80mmHg
のように2つの数字が表示されます。
上の数字は「収縮期血圧」、下の数字は「拡張期血圧」と呼ばれます。
上の血圧(収縮期血圧)
心臓が収縮して血液を全身へ送り出したときに、血管へかかる圧力です。
下の血圧(拡張期血圧)
心臓が拡張し、次に送り出す血液をためている間に血管へかかっている圧力です。
そして、この2つの差が「脈圧」です。
例えば、
130-80=50mmHg
となるため、130/80mmHgの方の脈圧は50mmHgです。
脈圧とは?自分で計算できます
脈圧の計算方法はシンプルです。
脈圧=上の血圧-下の血圧
例えば、
・120/80mmHg→脈圧40mmHg
・130/80mmHg→脈圧50mmHg
・140/80mmHg→脈圧60mmHg
・150/70mmHg→脈圧80mmHg
となります。
特に、
「上の血圧だけが上がってきた」
「下の血圧は昔と変わらない、または低くなった」
という方では、上と下の差が大きくなる傾向があります。
上と下の血圧の差はどのくらいが正常?
「血圧の差は何mmHgなら正常ですか?」という質問をよくいただきます。
しかし、現在の高血圧診療では、脈圧だけを使って高血圧を診断するわけではありません。
日本高血圧学会の高血圧管理・治療ガイドライン2025でも、将来の脳・心血管疾患との関連では、収縮期血圧、拡張期血圧、脈圧などの中でも収縮期血圧との関連が特に強いとされています。
そのため、
「脈圧が○mmHgだから正常」
「○mmHgを超えたから病気」
と単純に判断することはできません。
一方、脈圧の開大は血管の硬さと関連する指標として知られており、60mmHgを超える脈圧が一つの目安として扱われることもあります。ただし、これは病気を診断する絶対的な基準ではありません。
血圧の差が50mmHgの場合は?
例えば、
130/80mmHg
であれば脈圧は50mmHgです。
脈圧50mmHgという数字だけを見て、異常と判断する必要はありません。
それよりも重要なのは、
・上の血圧は高くないか
・下の血圧は高くないか
・家庭血圧が高い状態が続いていないか
を確認することです。
高血圧の診断基準は、診察室血圧で140/90mmHg以上、家庭血圧で135/85mmHg以上です。
血圧の差が60mmHg以上なら危険?
例えば、
140/80mmHg
であれば脈圧は60mmHgです。
脈圧が60mmHg程度以上になると、「血圧の上下差が大きい」と気になる方も多いでしょう。
脈圧の開大は、血管の弾力性が低下している状態と関連することが知られています。特に年齢が高くなるにつれて、太い動脈が硬くなることで上の血圧が上昇し、脈圧が大きくなりやすくなります。
ただし、
「脈圧60mmHg以上=動脈硬化がある」
と診断することはできません。
血圧は測定条件によって変化しますし、脈圧は上の血圧と下の血圧の両方から計算される数字です。
一度の測定だけではなく、家庭血圧を継続して確認することが大切です。
血圧150/70で差が80ある場合は?
例えば、
150/70mmHg
の場合、脈圧は80mmHgです。
この場合にまず注目したいのは、「脈圧80」という数字だけではありません。
上の血圧が150mmHgあるため、診察室で測定した血圧であれば高血圧の基準である140mmHg以上に該当します。
つまり、
「下の血圧は70だから大丈夫」
とはいえません。
上の血圧が140mmHg以上、下の血圧が90mmHg未満の状態は「孤立性収縮期高血圧」と呼ばれます。日本高血圧学会の2025年ガイドラインでもこの分類が示されています。
特に中高年以降では、このように上の血圧を中心に上昇するケースがみられます。
なぜ上と下の血圧の差が大きくなるの?
血圧の上下差が大きくなる背景には、さまざまな要因があります。
加齢による血管の変化
年齢を重ねると、太い動脈の弾力性が低下して硬くなっていきます。
若い血管は、心臓から血液が送り出されたときにある程度広がり、圧力を受け止めます。
しかし血管が硬くなると圧力を吸収しにくくなり、上の血圧が高くなりやすくなります。
その結果、下の血圧との差が大きくなることがあります。
高血圧
高血圧が続くことは血管へ負担をかける要因になります。
また、血管が硬くなることでさらに上の血圧が上昇することもあります。
そのため、中高年以降で「上の血圧だけがどんどん高くなってきた」という場合には、血圧全体を評価することが重要です。
動脈の硬さ
脈圧が大きいことは、動脈壁の弾力性低下と関連すると考えられています。
ただし、「脈圧が広い」という情報だけでは動脈硬化を診断することはできません。
年齢、高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙歴なども含め、必要に応じて血管の状態を評価します。
50代・60代になると血圧の差が大きくなる?
加齢に伴って、上の血圧は上昇しやすくなります。
一方、下の血圧はある年代を過ぎると必ずしも同じようには上昇しません。
そのため、
40代:125/80mmHg
50代:135/78mmHg
60代:150/75mmHg
のように、年齢とともに上の血圧を中心に高くなり、上下差が広がるケースがあります。
ただし、
「60代だから150でも正常」
という意味ではありません。
高血圧の診断基準が、年齢によって150mmHgや160mmHgへ変わるわけではありません。
血圧の正常値や年代による違いについては、「血圧の正常値は?40代・50代・60代の目安」の記事でも詳しく解説しています。
上の血圧が高く、下の血圧が低いのは大丈夫?
例えば、
160/65mmHg
のような血圧になると、
「下が低いから平均すれば大丈夫なのでは?」
と思う方もいるかもしれません。
しかし、血圧は上と下を平均して判断するものではありません。
160/65mmHgの場合、上の血圧は高血圧の基準を超えています。
上の血圧が160mmHg以上の場合は、自己判断で長期間様子を見ず、医療機関へ相談することをおすすめします。
血圧150・160・180・200mmHgの受診目安については、別の記事でも詳しく解説しています。
「下の血圧だけ高い」のとは何が違う?
脈圧が大きい状態とは反対に、
130/95mmHg
のように、上と下の差が小さく、下の血圧が高い方もいます。
この場合は「脈圧が狭い」ということよりも、拡張期血圧が90mmHg以上であることが重要です。
上の血圧が正常に見えても、下の血圧だけで高血圧の基準に該当することがあります。
「下の血圧だけ高いのはなぜ?」という記事でも詳しく解説しています。
血圧の差が大きいと動脈硬化ということ?
脈圧の開大は、動脈の硬さと関連することが知られています。日本高血圧学会の2025年総会でも、脈圧の開大は動脈壁の弾力性低下を反映し、脳・心血管病のリスクと関係すると整理されています。
しかし、血圧計で計算した脈圧だけから、
「動脈硬化があります」
と診断することはできません。
動脈硬化の評価では、患者さんの状態に応じて、
・年齢
・血圧
・LDLコレステロール
・血糖値、HbA1c
・喫煙歴
・家族歴
・心臓や血管の病歴
などを総合的に確認します。
必要に応じて、血液検査や心電図、血管に関する検査などを検討することがあります。
脈圧を狭くするにはどうすればいい?
「血圧の差を小さくしよう」と考えて、脈圧そのものだけを目標にする必要はありません。
まず重要なのは、上の血圧・下の血圧を適切に管理することです。
高血圧がある場合には、
・塩分を摂り過ぎない
・適正体重を目指す
・適度な運動を行う
・飲酒量を見直す
・禁煙する
・睡眠を見直す
など、一般的な高血圧対策が重要になります。
すでに降圧薬を服用している方は、「上下の差が広いから」という理由で自己判断で薬を減らしたり増やしたりしないようにしてください。
血圧の差が大きい場合は何科?
血圧の上下差が大きく、上の血圧も高い状態が続いている場合は、内科または循環器内科へ相談してください。
特に、
・上の血圧が140mmHg以上の日が続く
・血圧が150~160mmHg程度ある
・以前より上下差が大きくなってきた
・糖尿病や脂質異常症がある
・喫煙歴がある
・動悸、胸痛、息切れなどがある
場合には、一度医療機関で血圧や心血管リスクを確認するとよいでしょう。
芦屋ながさわ内科では、内科・循環器内科として高血圧を含む生活習慣病の診療を行っています。
受診する際には、数日間の家庭血圧を記録して持参すると、普段の血圧の状態を確認しやすくなります。
よくある質問
上と下の血圧の差が60あります。危険ですか?
脈圧60mmHgという数字だけで危険と判断することはできません。
脈圧の開大は血管の硬さと関連することがありますが、まずは上の血圧と下の血圧それぞれが高血圧の基準を超えていないかを確認することが重要です。
血圧150/70は大丈夫ですか?
150/70mmHgの場合、脈圧は80mmHgですが、それ以前に上の血圧150mmHgが高血圧の範囲に該当します。
正しい方法で家庭血圧を継続して測定し、高い状態が続く場合は医療機関へ相談しましょう。
血圧120/60で差が60あります。高血圧ですか?
120/60mmHgであれば、脈圧だけを理由に高血圧と判断するわけではありません。
脈圧と高血圧の診断基準は別のものです。
血圧の差が大きいと必ず動脈硬化ですか?
必ずしもそうではありません。
脈圧の開大は動脈の硬さと関連する指標の一つですが、脈圧だけで動脈硬化を診断することはできません。
上の血圧と下の血圧、どちらが重要ですか?
どちらも重要ですが、日本高血圧学会の2025年ガイドラインでは、収縮期血圧は将来の脳・心血管疾患リスクとの関連が特に強い血圧指標とされています。
上の血圧だけ、下の血圧だけを見るのではなく、両方を確認しましょう。
血圧の上下差が気になる方は芦屋ながさわ内科へ
「血圧が150/70で上下の差が80ある」
「最近、上の血圧だけ高くなってきた」
「血圧の差が60以上あるけれど大丈夫なのか知りたい」
「動脈硬化が心配」
という方は、まず正しい方法で家庭血圧を測り、数日間記録してみましょう。
血圧の上下差だけで病気を判断することはできませんが、上の血圧が高い状態が続いている場合や、生活習慣病などのリスクが重なっている場合には、医療機関へ相談することが大切です。
芦屋ながさわ内科では、循環器内科・一般内科として高血圧を含む生活習慣病について診療しています。
家庭血圧の記録や健康診断の結果をお持ちのうえ、ご相談ください。
記事監修
監修医師:長澤圭典
【資格・所属学会】
・医学博士
・日本循環器学会循環器専門医
・日本内科学会認定内科医・総合内科専門医
・日本心血管カテーテルインターベンション学会専門医
・日本心臓リハビリテーション学会心臓リハビリテーション指導士