脈が速い・遅い・飛ぶ
脈が速い・遅い・飛ぶ
心臓は、全身に血液を送り出すポンプとして、1日に約10万回もの拍動を繰り返しております。この拍動にあわせて血管に生じる動きのことを「脈拍」と呼び、心臓や血管の状態を知るうえで大切な指標のひとつとされています。
一般的に、成人の安静時の脈拍数は1分間におよそ60〜100回程度が目安とされておりますが、体格や年齢、日頃の運動習慣、その日の体調などによって個人差がございます。運動後や入浴後、緊張した場面などで脈が速くなるのは自然な体の反応であり、必ずしも心配なものではございません。
一方で、「安静にしているのに脈が速い、または遅い」「脈のリズムが一定でなく、時々飛ぶように感じる」といった状態が続く場合には、何らかの体のサインである可能性も考えられます。脈の異常には、心臓の電気信号に関わる不整脈のほか、ホルモンバランスの乱れや貧血、お薬の影響など、さまざまな背景が関係していることがございます。
脈のリズムは、心臓の中にある電気信号によってコントロールされています。この電気信号が規則正しく発生し、正しく伝わることで、心臓は一定のリズムで拍動を続けることができます。何らかの理由でこの電気信号の発生や伝わり方に乱れが生じると、脈が速くなったり遅くなったり、あるいは途中で飛ぶように感じたりすることがございます。
本記事では、脈が「速い」「遅い」「飛ぶ」それぞれのケースについて、考えられる原因やご自宅でのチェック方法、検査、受診の目安をご紹介いたします。なお、「ドキドキする」「胸が苦しい」といった動悸そのものの自覚症状につきましては、別記事でも詳しく解説しておりますので、あわせてご参照ください。
脈の測り方
脈は、手首の親指側にある血管(橈骨動脈)に人差し指・中指・薬指の3本を軽く当てることで、ご自身でも確認いただけます。強く押さえすぎると脈が触れにくくなりますので、軽く触れる程度が目安です。15秒間測定した拍動数を4倍する、あるいは1分間そのまま数えることで、1分あたりのおおよその脈拍数を算出できます。あわせて、脈のリズムが一定であるか、途中で飛ぶような間隔がないかも確認してみてください。
以下のような状態に心当たりがある場合は、一度ご相談いただくことをおすすめいたします。
✓安静にしていても脈が速い状態が続いている
✓脈の回数が少なく、めまいやふらつきを伴う
✓脈のリズムが不規則で、時々飛ぶように感じる
✓脈の異常とあわせて、息切れや胸の違和感がある
✓階段や坂道などで、以前より疲れやすくなったと感じる
✓突然の失神や、意識が遠のくような感覚があった
これらはあくまで一般的な目安であり、該当する場合に必ず病気であるというわけではございませんが、気になる症状が続く際は自己判断せず、医療機関にご相談いただくことが大切です。
なお、脈拍は測定するタイミングによっても変動いたします。食後や入浴後、運動の直後などは一時的に速くなりやすいため、できるだけ安静な状態で、朝起きた直後や就寝前など、決まったタイミングで測っていただくと、ご自身の普段の脈の状態を把握しやすくなります。数日にわたって記録しておくと、診察の際にも症状の経過をお伝えいただきやすくなります。
脈が速くなる状態は「頻脈」と呼ばれます。運動をした後や、発熱、痛み、緊張、カフェインやアルコールの摂取、寝不足といった場面で一時的に脈が速くなるのは、生理的な反応によるものと考えられており、原因となる状況が落ち着くとともに脈も戻っていくことがほとんどです。
一方で、安静にしていても脈が速い状態が続く場合には、次のような原因が背景にある可能性もございます。
●心房細動をはじめとする不整脈
●甲状腺機能亢進症などのホルモンバランスの異常
●貧血や脱水による代償的な変化
●発熱を伴う感染症
●一部のお薬や市販薬の影響
これらのうち、心房細動のような不整脈は、放置すると血栓ができやすくなり、脳梗塞などのリスクにつながる場合があるとされています。ご自身では「疲れているだけ」と思われがちな症状でもございますので、安静時の頻脈が続く場合には、心電図や血液検査などによって原因を調べることができる場合がございます。気になる際は医療機関でのご相談をおすすめいたします。
脈が遅くなる状態は「徐脈」と呼ばれます。日頃から運動習慣のある方は、心臓のポンプ機能が発達していることにより、1回の拍動で送り出せる血液量が増え、安静時の脈が比較的少なめになる場合がございます。これは一般的に生理的な変化とされており、症状を伴わなければ経過を見ることも多いとされています。
一方で、めまいやふらつき、強い倦怠感、息切れ、疲れやすさといった症状を伴う徐脈の場合には、次のような原因が考えられます。
●洞不全症候群(心臓の電気信号を作る部分の機能が低下する状態)
●房室ブロック(心房から心室への電気信号の伝わりが悪くなる状態)
●甲状腺機能低下症
●降圧薬や不整脈治療薬など、一部のお薬の影響
これらの中には、脈が極端に遅くなることで脳への血流が一時的に不足し、めまいや失神につながる場合もあるとされています。症状を伴う徐脈は、原因によっては専門的な検査や治療が必要となる場合がございますので、放置せず早めにご相談いただくことをおすすめいたします。
「脈が飛ぶ」「一瞬詰まるような感じがする」「ドスンと大きな拍動を感じる」といった症状は、期外収縮と呼ばれる不整脈のひとつが原因となっていることが多いとされています。これは、心臓の電気信号が本来のリズムより早いタイミングで発生することで、次の拍動までの間隔が乱れて生じるものです。電気信号が発生する場所によって、心房性期外収縮・心室性期外収縮などに分類されます。
期外収縮は、ストレスや睡眠不足、カフェインやアルコールの摂取、喫煙、加齢などをきっかけに、健康な方にも比較的よく生じることがあるとされております。回数が少なく、他に症状を伴わない場合には、経過を見ながら確認することも多いとされています。一方で、頻度が多い場合や、動悸・息切れ・胸の違和感・強い疲労感を伴う場合には、心臓に何らかの負担がかかっているサインである可能性も否定できません。まれに、心臓の基礎疾患が背景にある場合もあるとされています。
ご自身での判断が難しい部分でもございますので、脈が飛ぶ感覚が続く場合や、頻度が増えてきたと感じる場合には、一度検査を受けていただくことをおすすめいたします。
脈の異常が気になる場合、当院では主に次のような検査をご案内しております。
心電図検査
健康診断でも行われる基本的な検査で、心臓の電気的な活動を記録します。検査を行ったその瞬間の脈のリズムを確認でき、心臓の状態を知るための第一歩となる検査です。短時間で、体への負担なく行うことができます。
ホルター心電図検査
小型の記録装置を身につけていただき、24時間にわたって心電図を記録し続ける検査です。診察時には症状が出ていなくても、夜間や早朝など日常生活の中で一時的に生じる不整脈を捉えられる場合がございます。装着したまま普段どおりに過ごしていただけますので、体への負担も比較的少ない検査です。
心臓超音波(心エコー)検査
超音波を用いて、心臓の大きさや壁の厚さ、ポンプ機能、弁の状態などを確認する検査です。痛みや被ばくの心配がなく、脈の異常の背景に心臓の構造的な変化がないかを調べる際に行うことがございます。
血液検査
甲状腺機能や貧血の有無など、脈の異常に関連する体内の状態を確認することができます。
症状やこれまでの経過に応じて、必要な検査をご提案いたしますので、気になる点がございましたら診察の際にお気軽にお申し付けください。検査の結果、経過観察で問題ないと考えられる場合もあれば、より専門的な治療が必要と判断される場合もございます。いずれの場合も、検査結果にもとづいて今後の見通しをできるだけわかりやすくお伝えするよう努めております。
脈の異常は、生理的なものから治療が必要なものまで幅がございますが、次のような症状がある場合には、早めに医療機関を受診いただくことをおすすめいたします。
✓安静にしていても脈の速い・遅い状態が続いている
✓脈の異常とあわせて、息切れ、胸の痛みや違和感がある
✓めまいや立ちくらみ、意識が遠のくような感覚がある
✓脈が飛ぶ感覚の頻度が増えてきた、または長く続いている
✓以前と比べて疲れやすくなった、階段や坂道がつらく感じる
特に、突然の失神や意識消失を伴う場合、胸の強い痛みを伴う場合には、緊急性が高い可能性がございます。速やかに医療機関を受診いただくか、状況によっては救急要請もご検討ください。「様子を見ているうちに」と時間が経ってしまうケースも少なくございませんので、気になる症状がある際は、早めにご相談いただくことが大切です。
Q.脈は自分で測ることができますか?
A.はい、手首(橈骨動脈)や首(頸動脈)に指を軽く当てることで、ご自身で測定いただけます。15秒間測った回数を4倍すると、1分間あたりのおおよその脈拍数が分かります。
Q.運動後や緊張したときに脈が速くなるのは異常ですか?
A.運動や緊張、発熱時などに一時的に脈が速くなるのは、生理的な反応であることが多く、必ずしも病気を意味するものではございません。ただし、安静にしていても脈が速い状態が続く場合は、一度ご相談いただくことをおすすめいたします。
Q.健康診断で「不整脈の疑い」と言われました。すぐに受診すべきですか?
A.症状の程度によって対応は異なりますが、健診結果に不整脈の疑いを指摘された場合は、放置せず医療機関でより詳しい検査を受けていただくことが望ましいと考えられます。
Q.スポーツをしている人は脈が遅くなると聞きましたが本当ですか?
A.日頃から運動習慣のある方は、心臓の機能が高まることで安静時の脈が遅めになる場合がございます。これは一般に生理的な変化とされていますが、めまいや失神といった症状を伴う場合は病的な徐脈の可能性も考えられるため、注意が必要です。
Q.動悸を感じなくても、脈の異常はあるのでしょうか?
A.はい、脈の異常があっても自覚症状を伴わないケースもございます。健康診断などで指摘を受けた場合は、症状の有無にかかわらず一度ご確認いただくことをおすすめいたします。
Q.脈の異常が心配な場合、どのような検査を受けられますか?
A.当院では心電図検査のほか、日常生活の中での脈の変化を記録できるホルター心電図検査、心臓の構造を確認する心エコー検査などをご案内しております。症状の状況に応じて、適した検査をご提案いたします。
Q.脈が飛ぶような感じがしますが、これは危険な状態でしょうか?
A.脈が飛ぶ感覚は、期外収縮と呼ばれる不整脈のひとつによって生じることが多いとされ、健康な方にも比較的よく見られる症状です。多くの場合はすぐに危険な状態というわけではございませんが、頻度が多い場合や他の症状を伴う場合には、一度検査を受けていただくことをおすすめいたします。
Q.脈が飛ぶ回数が多い日と少ない日があります。様子を見ても大丈夫でしょうか?
A.体調やストレス、睡眠、カフェインの摂取量などによって、期外収縮の出方が変化することはございます。一時的なものであることも多いですが、頻度が増えてきた、続く期間が長いと感じる場合には、自己判断で様子を見続けるのではなく、一度ご相談いただくことをおすすめいたします。
Q.お薬の影響で脈が変化することはありますか?
A.はい、降圧薬や一部の不整脈治療薬、市販の風邪薬などの中には、脈の速さやリズムに影響を与える可能性があるものもございます。お薬を服用中に脈の異常が気になる場合は、自己判断で中止せず、処方元の医療機関や当院にご相談ください。
Q.脈の異常が疑われる場合、すぐに救急を呼んだほうがよいのはどのような時ですか?
A.突然の失神や意識が遠のく感覚、胸の強い痛みや締め付けられるような感覚を伴う場合には、緊急性が高い可能性がございますので、速やかに救急要請をご検討いただくことをおすすめいたします。
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