2026年9月10日

Apple Watchなどのスマートウォッチを見たときに、
「何もしていないのに脈拍120になっている」
「座っているだけなのに心拍数が高い」
「心拍数120って危険なの?」
と不安になったことはありませんか?
成人の安静時の心拍数は、一般的に1分間に60~100回程度が目安とされ、100回/分を超える状態は「頻脈」と呼ばれます。
ただし、スマートウォッチで一度「120」と表示されたからといって、必ず心臓の病気があるわけではありません。
緊張や睡眠不足、発熱、脱水、カフェインなどによって一時的に心拍数が上がることもありますし、スマートウォッチが正確に測定できていない可能性もあります。
一方で、安静にしているにもかかわらず120前後の脈拍が続く場合や、動悸・息切れ・胸痛・めまいなどを伴う場合には、不整脈などが隠れている可能性があります。
この記事では、
・脈拍120はどのくらい高いのか
・運動していないのに心拍数が上がる原因
・様子を見てもよいケース
・循環器内科を受診した方がよいケース
・スマートウォッチで脈拍が高く出たときの確認方法
について、循環器専門医の視点から分かりやすく解説します。
この記事のポイント
・成人では、安静時の心拍数が100回/分を超える状態を一般的に「頻脈」と呼びます
・脈拍120でも、一時的な緊張や発熱、脱水などが原因の場合があります
・スマートウォッチでは測定誤差が起こることもあります
・安静にしても120前後が続く場合には、一度医療機関への相談をおすすめします
・胸痛、強い息苦しさ、失神などを伴う場合には、早急な受診が必要です
脈拍120は高い?正常値はどのくらい?
一般的に、成人の安静時心拍数は60~100回/分程度が目安です。
そのため、椅子に座って落ち着いている状態などで心拍数が120回/分ある場合は、通常より速い状態と考えられます。
ただし、大切なのは「120という数字だけ」で判断しないことです。
例えば、
・階段を上った直後
・駅まで歩いた直後
・入浴後
・緊張しているとき
・暑い場所にいたとき
などは、病気がなくても心拍数が100~120回/分以上になることがあります。
一方、
「しばらく座って休んでいるのに120」
「朝起きた直後なのに120」
「何もしていないのに120前後が何度も出る」
という場合には、原因を確認した方がよいでしょう。
スマートウォッチで脈拍120=危険?
脈拍120という数字だけで、直ちに危険と判断することはできません。
心拍数は、体の状態によって常に変化しています。
例えば、運動や緊張によって一時的に120になっても、その後休むことで70~80程度まで戻るのであれば、生理的な反応である可能性があります。
一方で注意したいのは、
・安静にしても120前後から下がらない
・何度も120以上になる
・突然、脈が速くなる
・脈がバラバラしている
・動悸や息苦しさを伴う
といった場合です。
「120だから危険」「119だから安全」と数字だけで線を引くのではなく、安静時なのか、どのくらい続いているのか、症状があるのかを合わせて判断することが大切です。
運動していないのに心拍数が120になる原因
「走ったわけでもないのに、なぜ心拍数が高くなるの?」
と思われるかもしれません。
心拍数が上がる原因は、心臓の病気だけではありません。
代表的な原因を見ていきましょう。
① 緊張・ストレス
緊張したときに「心臓がドキドキする」という経験は、多くの方にあると思います。
ストレスや不安、緊張によって交感神経が活発になると、心拍数が上昇します。
例えば、
・仕事で強いストレスを感じた
・人前で話す直前
・病院に来て緊張している
・不安なことを考えている
といったときには、安静にしているように見えても心拍数が高くなることがあります。
② 睡眠不足・疲労
睡眠不足や疲労が続くと、自律神経のバランスが乱れ、普段より心拍数が高くなることがあります。
「ここ数日忙しくてほとんど寝ていない」
「仕事が続いて疲れがたまっている」
というときだけ脈拍が高いのであれば、疲労などが影響している可能性もあります。
ただし、心拍数が高い状態が続く場合には、それだけが原因と決めつけないようにしましょう。
③ 発熱
風邪や感染症などによって熱が出ると、心拍数も速くなる傾向があります。
体温が上がることで体の代謝が活発になり、全身へ血液を送るために心臓が速く動きます。
「昨日から熱があり、スマートウォッチを見ると脈拍110~120だった」
という場合には、発熱に伴う一時的な頻脈であることも考えられます。
④ 脱水
意外と見逃されやすいのが脱水です。
水分が不足すると、体内を循環する血液量が減少します。
それを補うために、心臓が速く動いて血液を送り出そうとすることで心拍数が上がることがあります。
特に、
・夏場
・汗をたくさんかいた
・下痢や嘔吐があった
・食事や水分をあまり取っていない
といった場合には注意が必要です。
⑤ カフェインやアルコール
コーヒーやエナジードリンクなどに含まれるカフェインによって、心拍数が上がったり、動悸を感じたりする方もいます。
また、飲酒も心拍数に影響する場合があります。
特に、
「お酒をたくさん飲んだ翌日に動悸がする」
「コーヒーを何杯も飲んだ後に脈が速くなる」
という場合には、飲食物が影響している可能性があります。
⑥ 貧血
貧血によって血液が十分な酸素を運びにくくなると、体は酸素を全身に届けようとして心拍数を上げることがあります。
貧血があると、
・動悸
・息切れ
・疲れやすい
・めまい
・立ちくらみ
などを伴うこともあります。
「最近、階段だけでも息切れする」という場合には、心臓だけでなく貧血なども含めて確認することがあります。
⑦ 甲状腺の病気
甲状腺ホルモンが過剰になる「甲状腺機能亢進症」などでは、安静にしていても心拍数が速くなることがあります。
心拍数が高いことに加えて、
・汗をかきやすい
・暑がりになった
・手が震える
・体重が減った
・疲れやすい
などの症状がみられることもあります。
血液検査で甲状腺機能を確認することで分かる場合があります。
⑧ 薬の影響
服用している薬によって心拍数が上がることもあります。
特に新しい薬を飲み始めてから、
「脈が速くなった気がする」
「動悸を感じるようになった」
という場合には、受診時に服用している薬を医師へ伝えましょう。
ただし、自己判断で処方薬を中止するのは避けてください。
⑨ 不整脈
特に循環器内科で確認しておきたいのが、不整脈による頻脈です。
例えば、
・発作性上室性頻拍
・心房細動
・心房粗動
などの不整脈では、突然心拍数が速くなることがあります。
特徴的なのは、
「徐々に速くなった」というより、「突然スイッチが入ったように速くなった」
というパターンです。
「急にドクドクし始めた」
「突然120~150以上になった」
「しばらくすると突然元に戻った」
という場合には、不整脈が起きていないか確認することがあります。
脈拍120と出たときに、まず確認してほしいこと
スマートウォッチで突然「120」と表示されても、まず数字を見て慌てる必要はありません。
胸痛や強い息苦しさなどがなければ、次のように確認してみましょう。
① まず座って安静にする
歩いた直後や家事の途中などであれば、椅子などに座って安静にしてください。
しばらく休んだあと、もう一度心拍数を確認します。
運動などによる一時的な上昇であれば、徐々に心拍数が下がってくることがあります。
② 自分でも脈を確認する
スマートウォッチの測定値が本当に正しいか、手首で脈を触れて確認してみるのも方法の一つです。
確認したいポイントは、
・本当に脈が速いか
・一定のリズムか
・バラバラしていないか
です。
スマートウォッチでは装着状態や体の動きなどによって、正確に測定できない場合もあります。
③ 何時に、何をしていたときか記録する
受診する場合に役立つのが、心拍数が上がったときの状況です。
例えば、
・19時ごろ
・夕食後にソファで座っていた
・心拍数125回/分
・10分ほど続いた
・動悸あり
・胸痛なし
といった情報があると、診断の参考になります。
スマートウォッチに心拍数の履歴が残っている場合には、受診時に見せていただくのも有用です。
こんな「脈拍120」は循環器内科を受診しましょう
一度120になっただけで、その後すぐ通常の心拍数へ戻り、体調にも問題がなければ、必ずしも重大な病気があるとは限りません。
一方、次のような場合には一度医療機関へ相談することをおすすめします。
・安静にしているのに120前後が続く
・何度も安静時に100~120以上になる
・突然心拍数が速くなることを繰り返す
・脈がバラバラしている
・動悸を繰り返す
・以前より息切れしやすくなった
・めまいや立ちくらみがある
・スマートウォッチから不整脈の通知が出た
特に、運動していない状態で120回/分前後の脈拍を繰り返している場合には、「体質だから」と放置せず、原因を確認しておくとよいでしょう。
「脈拍120+この症状」は早めの対応が必要です
心拍数だけでなく、症状も非常に重要です。
脈が速いことに加えて、
・胸の強い痛み、圧迫感がある
・強い息苦しさがある
・意識を失った
・意識が遠のく感じがある
・強いめまいがある
・冷や汗を伴う強い体調不良がある
といった症状がある場合には、単なる一時的な頻脈ではない可能性があります。
このような場合には、スマートウォッチで何度も心拍数を測り続けるより、速やかに医療機関を受診してください。
症状が強い場合には救急要請も検討します。
「120」という数字だけでは原因は分からない
同じ心拍数120でも、
Aさん:発熱によって徐々に120になっている
場合と、
Bさん:不整脈が始まり突然120になっている
場合では、意味が異なります。
スマートウォッチが教えてくれるのは主に「心拍数」です。
その心拍数が、
・正常なリズムで速くなっているのか
・不整脈によって速くなっているのか
を判断するためには、心電図などによる確認が必要になることがあります。
そのため、数字だけを見るのではなく、
「どんな状況で速くなったか」
「突然か、徐々にか」
「脈は規則正しいか」
「症状はあるか」
が重要になります。
循環器内科ではどんな検査をする?
安静時の頻脈や動悸がある場合には、症状や経過に応じて検査を行います。
心電図
まず行われることが多いのが12誘導心電図です。
現在の心拍数だけでなく、心臓がどのようなリズムで動いているのかを確認します。
ただし、診察時には心拍数が正常に戻っていることもあります。
ホルター心電図
「家では脈が速くなるのに、病院に来ると正常」
という場合に検討するのがホルター心電図です。
日常生活を送りながら心電図を長時間記録することで、普段の生活中に不整脈が起きていないかを確認します。
心エコー検査
超音波を使って、
・心臓の動き
・心臓の大きさ
・心臓の弁
・心臓のポンプ機能
などを確認します。
頻脈の背景に心臓の病気がないか確認するために行うことがあります。
血液検査
頻脈の原因は心臓だけではないため、
・貧血
・甲状腺機能
・電解質
・炎症など
を必要に応じて確認します。
スマートウォッチは「普段の心拍数」を知るためにも役立ちます
スマートウォッチのメリットは、「120」という一つの数字を見ることだけではありません。
むしろ、
普段の自分の心拍数と比べてどう変化しているか
を見ることが重要です。
例えば、普段の安静時心拍数が65~75程度の方が、
「ここ数日ずっと90~100ある」
「最近、夜になると120まで上がる」
「以前より安静時心拍数が明らかに高くなった」
という場合には、体調の変化を知る手がかりになります。
一時的な数値だけに一喜一憂するのではなく、心拍数の推移も確認してみましょう。
よくある質問
Q. 座っているだけなのに脈拍120です。危険ですか?
心拍数120という数字だけでは危険かどうかは判断できません。
緊張、発熱、脱水、睡眠不足などで一時的に上昇することもあります。
ただし、十分休んでも120前後が続く場合や、繰り返し起こる場合には、一度医療機関へ相談することをおすすめします。
Q. 脈拍120でも症状がなければ放置して大丈夫ですか?
症状がないから必ず問題ないとは限りません。
特に安静時に120前後の心拍数を繰り返している場合には、不整脈などが隠れていないか確認しておくとよいでしょう。
Q. 一瞬だけ120になって、すぐ80に戻りました。受診した方がいいですか?
歩いた直後などであれば、生理的に心拍数が上がった可能性もあります。
また、スマートウォッチの測定誤差の可能性もあります。
一方、「安静にしているのに突然120になり、突然元に戻る」ということを繰り返す場合には、不整脈の可能性もあるため循環器内科へご相談ください。
Q. スマートウォッチの心拍数は正確ですか?
スマートウォッチは普段の心拍数を把握するうえで便利ですが、常に医療機器と同じ精度で測定できるとは限りません。
装着状態や体の動きなどによって誤差が出ることもあります。
数値がおかしいと感じた場合には、安静にして再度測定するとともに、自分でも手首の脈を確認してみましょう。
Q. 心拍数が120になった記録は病院で見せた方がいいですか?
ぜひお持ちください。
心拍数が上がった日時や持続時間、その前後の変化などが分かると診断の参考になります。
対応するスマートウォッチで心電図を記録できている場合には、そのデータも受診時に見せてください。
スマートウォッチで脈拍120と出たら、「数字+症状+持続時間」で判断しましょう
スマートウォッチで「心拍数120」と表示されると、
「心臓の病気では?」
「すぐ病院に行った方がいい?」
と不安になるかもしれません。
ただし、120という数字だけで危険かどうかが決まるわけではありません。
緊張やストレス、睡眠不足、発熱、脱水、カフェインなどによって一時的に心拍数が上がることもあります。
大切なのは、
・安静にしているのに高いのか
・どのくらい続いているのか
・繰り返しているのか
・脈は規則正しいのか
・動悸や息切れなどの症状があるのか
を確認することです。
特に、
・安静にしても120前後が続く
・何度も繰り返す
・突然速くなって突然戻る
・脈がバラバラしている
・動悸や息切れがある
といった場合には、循環器内科で一度確認することをおすすめします。
芦屋ながさわ内科では、循環器専門医が動悸や頻脈、不整脈などの循環器症状について診療しています。
スマートウォッチに心拍数や心電図の記録が残っている場合には、受診時にお見せください。
「脈拍120と出たけれど、病院に行くべきか分からない」という段階でも、お気軽にご相談ください。
監修
監修医師:長澤 圭典
・医学博士
・日本循環器学会 循環器専門医
・日本内科学会 認定内科医・総合内科専門医
・日本心血管カテーテルインターベンション学会 専門医