2026年4月10日

健康診断や自宅で血圧を測ったとき、
「血圧が130だったけれど高いの?」
「140を超えたら高血圧?」
「60代なら少しくらい高くても年齢相応では?」
「高血圧の基準が厳しくなりすぎていると聞いたけれど本当?」
と疑問に思ったことはないでしょうか。
血圧について調べると、「120/80」「130/80」「140/90」など、さまざまな数字が出てくるため、どれを基準にすればよいのか分かりにくいかもしれません。
実は、これらの数字はすべて同じ意味ではありません。
「正常血圧」「高血圧と診断する基準」「高血圧の治療で目指す血圧」には、それぞれ異なる数字が設定されています。
また、現在の高血圧の診断基準は、40代・50代・60代だからといって変わるものではありません。
この記事では、日本高血圧学会の「高血圧管理・治療ガイドライン2025」などをもとに、血圧の正常値や高血圧の基準について分かりやすく解説します。
この記事のポイント
・診察室で140/90mmHg以上の場合は、高血圧の診断基準に該当します
・家庭血圧では135/85mmHg以上が高血圧の基準です
・診察室血圧の正常血圧は120/80mmHg未満です
・130~139/80~89mmHgは「高値血圧」で、高血圧ではなくても注意が必要です
・高血圧の診断基準は、40代・50代・60代で変わるわけではありません
・高血圧治療中の降圧目標は、原則として診察室130/80mmHg未満、家庭125/75mmHg未満とされています
・血圧は1回の測定値だけで判断せず、家庭で継続して測定することが大切です
そもそも「上の血圧」「下の血圧」とは?
血圧は通常、「上の血圧/下の血圧」という2つの数字で表されます。
上の血圧(収縮期血圧)
心臓が収縮して血液を全身へ送り出したときに、血管にかかる圧力です。
例えば「130/80mmHg」であれば、130mmHgが上の血圧です。
下の血圧(拡張期血圧)
心臓が広がって血液を取り込んでいるときに、血管にかかっている圧力です。
「130/80mmHg」であれば、80mmHgが下の血圧にあたります。
上の血圧だけ高い方もいれば、下の血圧だけ高い方もいます。
高血圧の判定では、上または下のどちらか一方でも基準を超えている場合、高血圧に該当することがあります。
血圧の正常値はどのくらい?
成人の診察室血圧では、120/80mmHg未満が「正常血圧」に分類されます。
血圧の分類を整理すると、次のようになります。

例えば、次のように考えます。
・118/72mmHg → 正常血圧
・125/75mmHg → 正常高値血圧
・132/82mmHg → 高値血圧
・145/85mmHg → Ⅰ度高血圧
・128/92mmHg → 下の血圧が高いためⅠ度高血圧
「130を超えたら高血圧」ではありません
血圧について特に誤解されやすいのが、「130を超えたら高血圧なのか」という点です。
日本では、診察室血圧が130~139/80~89mmHgの場合は「高値血圧」に分類されますが、この数値だけで高血圧と診断されるわけではありません。
高血圧の診断基準は、診察室血圧140/90mmHg以上です。
ただし、130~139/80~89mmHgであれば「まだ高血圧ではないから何もしなくてよい」というわけでもありません。
将来的に高血圧へ移行したり、心臓や血管の病気につながったりするリスクを考え、食生活や運動、体重などを見直すことが大切です。
自宅で測る「家庭血圧」は基準が違います
病院や健康診断で測った血圧と、自宅で測った血圧では基準が異なります。
病院では緊張などによって血圧が上がることがあるため、家庭血圧では診察室血圧より低い基準が設定されています。

高血圧の基準としては、
・診察室血圧:140/90mmHg以上
・家庭血圧:135/85mmHg以上
と覚えておくと分かりやすいでしょう。
40代・50代・60代で血圧の正常値は違う?
「50代なら130くらいは普通なのでは?」
「60代なら140くらいあっても年齢相応では?」
と思われている方もいらっしゃるかもしれません。
確かに、血圧は年齢とともに高くなる傾向があります。
しかし、高血圧の診断基準そのものが、40代・50代・60代で変わるわけではありません。
「年齢が高いから血圧も高くて当然」と考えて放置するのではなく、年代にかかわらず血圧の状態を確認することが大切です。
40代の血圧
40代であっても、
・診察室血圧140/90mmHg以上
・家庭血圧135/85mmHg以上
が続いている場合には、高血圧が疑われます。
また、130~139/80~89mmHgであっても、「まだ40代だから大丈夫」と考えるのではなく、食事、運動、体重、飲酒、睡眠などの生活習慣を見直してみましょう。
高血圧は自覚症状がほとんどないため、比較的若いうちから自分の血圧を把握しておくことが重要です。
50代の血圧
50代になると、高血圧だけでなく、糖尿病や脂質異常症などの生活習慣病を指摘される方も増えてきます。
血圧だけを見るのではなく、
・血糖値
・HbA1c
・LDLコレステロール
・中性脂肪
・腎機能
・体重
・腹囲
などもあわせて確認することが大切です。
血圧がそれほど高くなくても、糖尿病や脂質異常症など、心臓や血管の病気につながるリスクを複数持っている場合には、より慎重な管理が必要になることがあります。
60代の血圧
年齢とともに血管が硬くなると、特に「上の血圧」が高くなりやすくなります。
例えば、
「150/75mmHg」
のように、下の血圧は高くないのに上の血圧だけが高くなることがあります。
このような状態は「孤立性収縮期高血圧」と呼ばれ、高齢になるほどみられやすくなります。
「60代なら上が150くらいでも年齢相応」と自己判断せず、家庭血圧を記録したうえで医療機関へ相談しましょう。
「血圧は年齢+90まで大丈夫」は本当?
以前は、「上の血圧は年齢+90くらいまでなら大丈夫」といった考え方が知られていました。
この考え方では、
・50歳 → 140mmHg
・60歳 → 150mmHg
・70歳 → 160mmHg
という計算になります。
しかし、「年齢+90」は現在の高血圧診療で用いられている基準ではありません。
その後の研究によって、年齢にかかわらず血圧が高くなるほど、脳卒中や心臓病などのリスクが高まることが分かってきました。
そのため、「年齢が上がれば血圧も高くてよい」と単純に考えるのではなく、現在の基準に沿って判断することが大切です。
「高血圧の基準がおかしい」と言われるのはなぜ?
インターネットなどでは、
「昔より高血圧の基準が厳しくなっている」
「130を超えただけで高血圧にされる」
「年齢を考えず一律に血圧を下げるのはおかしい」
といった情報を目にすることがあります。
こうした情報が出てくる背景には、「高血圧の診断基準」と「治療で目指す血圧」が混同されていることがあります。
高血圧の診断基準は140/90mmHg以上です
現在も、高血圧の診断基準は、
・診察室血圧:140/90mmHg以上
・家庭血圧:135/85mmHg以上
です。
「130/80mmHg以上になったら高血圧」というわけではありません。
130/80mmHgは何の数字?
「高血圧管理・治療ガイドライン2025」では、高血圧のある方について、治療によって目指す血圧を原則として、
・診察室血圧:130/80mmHg未満
・家庭血圧:125/75mmHg未満
としています。
つまり、
「140/90mmHg以上」は高血圧かどうかを判断する診断基準であり、「130/80mmHg未満」は高血圧の方が治療によって目指す降圧目標です。
この2つは意味が異なります。
「高血圧の基準が130/80mmHgに変更された」と誤解しないようにしましょう。
高齢者でも130/80mmHg未満を目指すの?
「高血圧管理・治療ガイドライン2025」では、原則として年齢にかかわらず130/80mmHg未満を降圧目標としています。
ただし、「誰でも必ず130/80mmHg未満まで下げなければならない」という意味ではありません。
血圧を下げることで、
・めまい
・ふらつき
・立ちくらみ
・転倒
・腎機能への影響
などが生じる場合もあります。
特に高齢者では、年齢だけではなく、身体機能、持病、服用している薬、転倒リスクなども含めて、一人ひとりに合わせた治療が必要です。
血圧の数値だけを見て、自己判断で薬を増やしたり減らしたりしないようにしましょう。
血圧は1回高かっただけでは判断できません
健康診断で一度140mmHgを超えたからといって、それだけで普段から血圧が高いとは限りません。
血圧は、
・緊張
・睡眠不足
・寒さ
・運動
・ストレス
・飲酒
・カフェイン
・喫煙
・測定時の姿勢
など、さまざまな条件によって変化します。
また、病院では血圧が高いのに自宅では正常な「白衣高血圧」や、反対に病院では正常なのに自宅では血圧が高い「仮面高血圧」もあります。
そのため、高血圧の診断や治療では、家庭血圧を継続して確認することが非常に重要です。
家庭血圧の正しい測り方
家庭血圧は、できるだけ毎日同じ条件で測定することが大切です。
基本的には、朝と夜の1日2回測定します。
朝に測る場合
・起床後1時間以内に測る
・排尿後に測る
・朝食を食べる前に測る
・降圧薬を服用している場合は、原則として服薬前に測る
・椅子に座って1~2分安静にしてから測る
夜に測る場合
・就寝前に測る
・椅子に座って1~2分安静にしてから測る
1回の測定機会に原則2回測定し、その平均値を記録します。
「高い数字が出たから」「低い数字が出るまで」と何度も測り直すのではなく、測定した値を記録しておくことが大切です。
どのくらいの血圧なら病院へ行った方がいい?
血圧が少し高かっただけで、必ずしもすぐに治療が必要になるわけではありません。
一方で、血圧が高い状態を長期間放置すると、心臓や血管に負担がかかる可能性があります。
次のような場合には、一度医療機関へ相談してみましょう。
家庭血圧135/85mmHg以上が続いている
家庭で測定した血圧が、何日かにわたって平均的に135/85mmHg以上となっている場合は、高血圧が疑われます。
測定した血圧を記録して医療機関へ持参すると、診断の参考になります。
健康診断で140/90mmHg以上を指摘された
健康診断では緊張などによって、一時的に血圧が高くなることもあります。
ただし、「緊張しただけだろう」と自己判断するのではなく、その後自宅で血圧を測ってみることが大切です。
130~139/80~89mmHgが続いている
高血圧の診断基準には達していなくても「高値血圧」に該当します。
特に、
・糖尿病がある
・脂質異常症がある
・腎臓病がある
・肥満がある
・喫煙習慣がある
・心臓病や脳卒中にかかったことがある
といった場合には、血圧だけではなく全体的なリスクを確認する必要があります。
気になる場合は医療機関へ相談しましょう。
血圧が180/120mmHg以上だった場合は?
血圧が非常に高い場合には注意が必要です。
ただし、「180/120mmHg以上だった」という数字だけで、すべての方が直ちに救急搬送を必要とするわけではありません。
高血圧緊急症では、非常に高い血圧に加えて、脳や心臓、腎臓、大血管などに急性の障害が起きていることが問題となります。
特に、
・強い胸の痛みがある
・強い息苦しさがある
・意識がおかしい
・突然の激しい頭痛がある
・手足が動かしにくい
・言葉が出にくい
・急に見え方がおかしくなった
などの症状がある場合は、速やかに救急要請を検討してください。
症状がなくても非常に高い血圧が繰り返し続く場合には、放置せず医療機関へ相談しましょう。
血圧を下げるために日常生活でできること
高血圧の予防や治療では、薬だけではなく生活習慣を整えることも重要です。
特に日常生活では、
・塩分の多い食品を摂りすぎない
・適正体重を意識する
・無理のない範囲で身体を動かす
・お酒を飲みすぎない
・禁煙する
・十分な睡眠をとる
といった点を意識しましょう。
ただし、持病や服用している薬などによって、適した生活習慣の改善方法は異なります。
すでに降圧薬を服用している方は、血圧が下がったからといって自己判断で薬を減らしたり中止したりせず、医師と相談してください。
よくある質問
Q. 血圧130/80mmHgは高血圧ですか?
診察室血圧130~139/80~89mmHgは「高値血圧」に分類されますが、日本の基準では高血圧の診断には該当しません。
ただし、将来の高血圧や心臓・血管の病気を予防するため、生活習慣を見直していくことが大切です。
Q. 血圧140/90mmHgは高血圧ですか?
診察室で140/90mmHg以上が繰り返し確認される場合は、高血圧の診断基準に該当します。
家庭血圧の場合は135/85mmHg以上が基準です。
Q. 60代なら血圧150mmHgでも大丈夫ですか?
年齢だけを理由に「150mmHgまでなら大丈夫」と判断することはできません。
現在の高血圧の診断基準は年齢によって変わるものではないため、150mmHg前後の血圧が続いている場合には、家庭血圧を記録したうえで医療機関へ相談しましょう。
Q. 上の血圧と下の血圧はどちらが重要ですか?
どちらも重要です。
上の血圧だけ高い場合も、下の血圧だけ高い場合も、高血圧に該当することがあります。
Q. 病院では高いのに家では正常です。問題ありませんか?
病院などで測ったときだけ血圧が高くなる「白衣高血圧」の可能性があります。
反対に、病院では正常でも家庭では高くなる「仮面高血圧」もあります。
家庭血圧を記録したうえで、医師へ相談することをおすすめします。
まとめ|年齢だけで判断せず、家庭血圧も確認しましょう
血圧は年齢とともに高くなる傾向がありますが、「40代だから」「60代だから」といって高血圧の診断基準が変わるわけではありません。
現在、日本では、
・診察室血圧:140/90mmHg以上
・家庭血圧:135/85mmHg以上
が高血圧の診断基準です。
一方、高血圧治療中の方については、原則として、
・診察室血圧:130/80mmHg未満
・家庭血圧:125/75mmHg未満
が降圧目標とされています。
「正常血圧」「高血圧の診断基準」「治療で目指す血圧」はそれぞれ意味が異なるため、数字だけを見て自己判断しないことが大切です。
また、血圧はその日の体調や測定条件によっても変動します。
健康診断で血圧を指摘された方や、家庭血圧が135/85mmHg以上の日が続いている方は、数日間の血圧を記録したうえで医療機関へ相談しましょう。
芦屋ながさわ内科では、高血圧をはじめとした生活習慣病の診療を行っています。
「この血圧は受診した方がいい?」
「健康診断で血圧が高いと言われた」
「自宅と病院で血圧が大きく違う」
といった場合も、お気軽にご相談ください。
参考資料
・日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025」
・日本高血圧学会「高血圧の10のファクト~国民の皆さんへ~」
・厚生労働省「健康日本21アクション支援システム 高血圧」
・厚生労働省 循環器病対策推進協議会「血圧に関する指標等について」
・日本高血圧協会「高血圧Q&A」
記事監修
監修医師:長澤 圭典
・医学博士
・日本循環器学会 循環器専門医
・日本内科学会 認定内科医・総合内科専門医
・日本心血管カテーテルインターベンション学会 専門医
・日本心臓リハビリテーション学会 心臓リハビリテーション指導士